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報告書・レポート 新型コロナウイルス流行下の居住不安に関する調査データの分析と支援策の提案

2021年4月14日
COVID-19住民調査プロジェクトチーム×一般社団法人居住支援全国ネットワーク・コラボレーションWG

代表
田淵貴大
メンバー
菅野拓、西岡大輔、吉岡貴史、大久保亮、大川純代、財津將嘉、津野香奈美、堀愛、名西恵子、芝田淳、石川久仁子、立岡学

【はじめに ―調査の目的-】

新型コロナウイルス流行に伴い社会経済的状況が悪化し、多くの人が住居を失うことが懸念されている。住宅確保要配慮者など困窮者の支援にかかわる全国組織である「居住支援全国ネットワーク」に加盟する団体をはじめとした多くの組織が、従来から居住支援に取り組んできている。そこで、第一に、現在の日本において住まいを失いかねない人が実際にどの程度実在するかを推計することを目的とし、どのような居住支援が必要で、支援体制をどのように整えるべきなのかといったことを更に検討するための基礎資料の作成を目的として、居住状況、支援資金の利用の有無、コロナ禍における暮らしや仕事の不安や実情について相談できているかどうか等について調査を実施した(本インターネット調査は日本全国の15-80歳の男女を対象として2021年2月に実施された)。調査データの分析結果に基づき支援策等について提案する。

【結果】

日本全国の15-80歳の男女23142人のうち、現在の住居が「居候(いそうろう)もしくはネットカフェ」だと回答した者が0.2%(42人)おり、全体の1.8%(419人)が「今から3ヶ月以内に住むところを失うと思う」と回答していた。新型コロナウイルス流行後の住居確保給付金の支給を受けたと回答する者が全体の4.3%(993人)いた(調整後)。 「今から3ヶ月以内に住むところを失うと思う」と回答した411人(無調整)のうち、22.5%(88人)が民生委員・児童委員・自治会役員など、地域の人、25.6%(103人)が社会福祉協議会、20.2%(85人)がNPOなどの民間団体、22.6%(93人)が自治体の相談窓口に相談していた(複数回答あり)。一方、誰にも相談できていない者が63.3%(263人)、家族や親類にしか相談していない者が4.0%(18人)おり、住居喪失の不安を抱えるにもかかわらず、何らかの相談窓口につながっていない人が2/3程度に及んでいた。なお、24.6%(101人)が住居確保給付金の支給を受けており、22.7%(93人)が社会福祉協議会から資金の貸付を受けていた。

なお、新型コロナウイルス流行後に住居確保給付金の支給を受けた905人(無調整)のうち、69.8%(632人)が社会福祉協議会から資金の貸付も受けていた。これらの資金支援を活用するためには何らかの機関に相談することになるため、当然ながら、住居確保給付金受給者で誰にも相談できていない者は一人もいなかった。

各地にどれぐらいの新しく居住支援を必要とする人(「今から3ヶ月以内に住むところを失うと思う」と回答し、かつ、誰にも相談していない人)がいるか地域別の人口に応じて推定すると、北海道東北に15万人、関東に39万人、北陸甲信越に8万人、中部に23万人、近畿に16万人、中国四国に8万人、九州沖縄に11万人であった。

本調査はインターネット調査をもとにしており、回答者の特徴や傾向が偏っている可能性があったため、日本を代表するデータである国民生活基礎調査データを用いて重みづけすることにより、日本全国の値だとみなせるよう調整している(※注記:無調整と調整後の数値をそれぞれ用いており、同じ状況の人数が異なっていますが、間違いではありません)。

【考察・提案】

新型コロナウイルス流行に伴い住居喪失の不安を抱えている人々がいることが明らかになった。「今から3ヶ月以内に住むところを失うと思う」と回答していた1.8%を日本全国の人口(15-79歳男女;9,971万人)にあてはめると、約180万人に相当する。この100万人以上もの人が実際に住むところを失うかどうかは定かではないが、おそらく不安を抱えながら現在の生活を送っていることが想像できる。居住は権利である。こうした不安は我が国の施策において従来から居住の権利が確立していないがために起こるものであるとも考えられ、今後、居住の権利を確立していくことが望まれる。

次に、上記180万人のうち、約6割の120万人には相談による支援が行き届いていない可能性がある。居住支援が必要なこれらの人々に対して適切な支援を届けるために、支援体制の一層の充実と並行して、行政、社会福祉協議会、NPOなどの各種機関は、相談支援が行き届いていない人々の存在を認識し、情報の周知のみならず、積極的なアウトリーチ活動を推進することが求められる。

各地の社会福祉協議会への相談や申請の件数が多すぎて対応が追い付いていないとの報道がある(時事通信2021年3月17日)。一方、自治体などの公的な相談窓口に直接相談に行くことができないような事情を抱えた人もいると考えられ、NPOなどの民間団体の果たす役割も重要である。NPOなどの民間団体は行政をはじめとした公的な機関よりも、組織基盤がぜい弱なことが多い。居住支援に取り組むNPOなどの民間団体はこれまで住居喪失の不安を抱えている人を各地で適切に支援につなげるため、情報周知やアウトリーチ活動をおこなってきたが、シェルターや支援付き住宅の設置運営などが期待され、さらなる事業基盤強化を実施する必要がある。

また,今回の新型コロナウイルス流行に伴う住居喪失の危機や不安に対して,住居確保給付金が居住喪失を含む困窮状態に対して強いセーフティネットとして機能した可能性が示唆された。もし,同制度が存在せず,家賃滞納等により住居を失う人が多数生まれていたならば,生活困窮者自立支援制度,生活保護制度等の現場はさらなる混乱に陥っていたことが予想される。そもそも,我が国には,生活保護制度における住宅扶助のほかに,家賃等の住宅費を補助する制度が存在しない。新型コロナウイルス問題の継続により多くの人で社会経済状況が改善していないことを踏まえると現在延長され続けている住居確保給付金を打ち切ることは好ましくないと考えられる。今回の事態は,住居確保給付金のような住宅扶助制度を恒久化する必要性を示唆している。

謝辞:本提案の基盤となった調査研究事業は、READYFORの新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金(第5期2回目)による助成を受けて実施しました。
https://readyfor.jp/projects/covid19-relief-fund-02/announcements/155606